麹からの味噌作りで発酵の不思議を体験しながら、生みそ(酵素が生きている味噌)の熟成やそれならではの香りの素晴らしさを身につけると、食品の持つ個性という美味しさの原点にぐっと近づいていく。
これが「麹からの味噌作りワーク」の本来の目的だった。
和食は日本の文化であり、地域に伝わる伝統食や郷土料理は素直に日本人の味覚に訴えるものがある。
但し、食文化の可能性はそれで終わるものではない。文化は新しいものを取り入れて変化していってこそ淘汰と成長があり進化へと繋がる。
次なる提案は果物から派生する発酵文化である。
「天然酵母パン」は言葉として浸透しても、これがいったい何の事なのか自分なりの解釈を持っている人は多くない。パン食の文化が希薄なのだ、いや日本的と言うべきか。
米は育つ姿が身近にあり、精米、炊飯、ある時は団子を作ったり、食べ比べたり・・。
パンはパン屋を選ぶか、並んでいるパンを選んで買って食べるのが殆どだろう。パン屋の陳列棚を覗いてみれば、そこの地域の文化が分かると言っても言い過ぎではない。
パンと言えば菓子パンや惣菜パンを軽食代わりに食べるイメージが強くないだろうか。
例えると「おにぎり」。
梅にしようか、たらこにしようか、ツナマヨにしようか、おこわにしようか、チャーハンおにぎりにしようか、といった具合で、多様性はパンにもその現象が現れている。
米粉パンや天然酵母パンもそのラインナップに上がる。
このパンの食べ方が、私が日本的と言う理由である。
パン(粉)の美味しさはどこに行ったのだろう、香りは?
食事パンとしての、米で言えば白飯の美味しさを水にまで遡って味わうといった食文化を”忘れさせられて”いないだろうか?
味噌を手作りして、野菜の味や献立にまで気づきを及ぼしたように、パンにおける天然酵母も食卓に変革をもたらす救世主の一つと捉えているのだ。
その最初の一歩。
今回のワークでは、
1)天然酵母って何だろう 2)天然酵母に触れてみよう 3)素材の美味しさを味わうメニュー
という流れで、座学と実習で「美味しいパンが導く食卓」へベクトルを向けてみたいと考えている。
先ずは資料編
【桑の実の採取と酵母起こし】
蓋を軽く閉めた保存瓶で、毎日一回は振って空気を抜きながら21日(7日後)。汁を濾したものが酵母液。軽く発泡しているのが解る。
【小麦粉と酵母液の混合生地の発酵の様子】
小麦粉、モルトエキス(麦芽糖)、水を入れて練る。室温に置いて15時間後の様子(右が桑から増やした酵母入り)
2種類の酵母液を比較しながら毎日一回粉を足しながら培養していく。
最終的に桑酵母は過発酵となり、酸味を持つように。この違いが生き物であり、一律のレシピで誰もが同じようにパンが焼けない理由である。
詳しくは講座でご説明いたします。