天然酵母パンの本当の魅力に気付いたのは、もしかしたら今年かもしれない。
ねおかんぱーにゅ南部に近くにある専門学校のインターン生と「小濁発酵文化研究会」を立ちあげ、昔小濁周辺の山でよく食べていたという山葡萄「ミヤマツ」を求め、その酵母でパンを焼くことに挑戦し始めたのは3年前のこと。
三つの柱である「魚の発酵」「天然酵母パン」「麹作りからの味噌作り」。
・インターンの山口君は魚の発酵の研究で自らを飛躍させた。
・天然酵母パンは、清水さんを中心に食の仲間づくりに貢献した。
・麹作りは、甘酒や当時流行っていた塩麹と相まって、手作り味噌作りブームへと花開いた。
天然酵母パンは、先ず窯という規定条件、そして薪、そして小濁地域ならではの産品としてのミヤマツの掛け算である。
私は希望を持っていた。ミヤマツは地域の思い出であり、幻であり、誰も着目した事が無い上にその存在を熟知している人が希少なのである。私は小濁でミヤマツを収穫するべく知人に挿し木による繁殖を依頼、窯を作り薪のマッチングを導くことになった。
右往左往しながら「小濁の窯で、ミヤマツ酵母のパンを焼く」ことに行き着いたが地域の文化となるには程遠い。
今年2年ぶりに冷蔵庫に眠っていたミヤマツ酵母液を起こす事になった。
「村シェフと行こう!おいしい里山学校」そして、水と薪学園の薪講座の特別講座での「薪クッキング」で天然酵母パンを焼くためである。
おいしい里山学校では、山の果物から酵母の元種(ルヴァン・ナチュレル)を作る方法を具体的に示すため、今年採取した桑をモデルに選んだ。それと同時にミヤマツ酵母も並行して行った。(以前のブログで紹介)
驚くべきはここからだ。
今年起こした桑は確かに元気で爆発的な発酵力があったのだが、暴走して直ちに過発酵となり、最終的にその力は持続することなく終えることになった。
一方、2年間冷蔵庫で眠っていたミヤマツ酵母液はというと、桑のそれとは比較にならないくらい頼りない発酵力。
諦めかけていたある時、桑を追い越す発酵を見せ始めたのである。少々の事ではへこたれない「底力的なパワー」。それは何回繋いでも安定して多少の放置にも耐え発酵力が衰えず、美味しさ以外の何かを生み出しているようにも感じれた。
そして7月28日のアルネ小濁でのワークショップ「薪クッキング」で、三度それに気づかされることになる。
2種類のパンでサンドイッチを作るメニューで、1種類はミヤマツ酵母の田舎パン(パン ド カンパーニュ:ライと小麦の全粒粉が入った天然酵母パン)。もう1種類はイーストと塩のみのいわゆるバゲット生地。ここでもミヤマツ酵母は存在感を主張した。
グングン膨らんでいくイーストに比べてミヤマツ酵母は地味な膨らみ。
ところが窯に入れると伸びが逆転する(単にイースト側が過発酵という事ではない)。そして合わせる素材に対する包容力の違いも際立つ。
それはこの地由来の酵母だからか、天然酵母に共通する特徴なのかは定かでない。
ミヤマツ酵母は比喩的に教えてくれた。
「一発ブレイク的な元気は長続きせず、組織にとってその有害物質は”長い冴えない時間”によって淘汰される。そして進化の過程にこそ魅力が在るのである」
さらに・・
・継続は力なり…続ける事が目的なのではなく、継続できる力こそ本来の力なのである。
・安定した力は、勝ち負けや奪い合いではなく、”共存とバランスによって生まれる社会”なのである。
・「自然から学べ」。
私の田舎パンは完成することが無い事が分かった。
7/16 小濁にて「村シェフと行こう!おいしい里山学校 天然酵母パン講座2」
ドライトマト入りパン・オー・ルヴァン(ミヤマツ酵母種、粉、塩、水)
窯の上で発酵中
それぞれの参加者が持ち寄った天然酵母生地を焼く
天然酵母パンを囲むランチ
7/28 小濁にて「水と薪学園 薪講座特別講座 薪クッキング」
焼きあがったフランスとカンパーニュ
サンドイッチ
左「フランス・シュリンプ・アボカド・チェダー・タルタルソース」
右「ハックルベリー入りカンパーニュ・ローストビーフ・トマト・ピクルス・ハラペーニョ」
ランチ風景