2013年6月28日金曜日

天然酵母に学ぶ味覚の自然回帰

麹からの味噌作りで発酵の不思議を体験しながら、生みそ(酵素が生きている味噌)の熟成やそれならではの香りの素晴らしさを身につけると、食品の持つ個性という美味しさの原点にぐっと近づいていく。
これが「麹からの味噌作りワーク」の本来の目的だった。

和食は日本の文化であり、地域に伝わる伝統食や郷土料理は素直に日本人の味覚に訴えるものがある。
但し、食文化の可能性はそれで終わるものではない。文化は新しいものを取り入れて変化していってこそ淘汰と成長があり進化へと繋がる。

次なる提案は果物から派生する発酵文化である。
「天然酵母パン」は言葉として浸透しても、これがいったい何の事なのか自分なりの解釈を持っている人は多くない。パン食の文化が希薄なのだ、いや日本的と言うべきか。

米は育つ姿が身近にあり、精米、炊飯、ある時は団子を作ったり、食べ比べたり・・。
パンはパン屋を選ぶか、並んでいるパンを選んで買って食べるのが殆どだろう。パン屋の陳列棚を覗いてみれば、そこの地域の文化が分かると言っても言い過ぎではない。

パンと言えば菓子パンや惣菜パンを軽食代わりに食べるイメージが強くないだろうか。
例えると「おにぎり」。
梅にしようか、たらこにしようか、ツナマヨにしようか、おこわにしようか、チャーハンおにぎりにしようか、といった具合で、多様性はパンにもその現象が現れている。
米粉パンや天然酵母パンもそのラインナップに上がる。
このパンの食べ方が、私が日本的と言う理由である。

パン(粉)の美味しさはどこに行ったのだろう、香りは?
食事パンとしての、米で言えば白飯の美味しさを水にまで遡って味わうといった食文化を”忘れさせられて”いないだろうか?
味噌を手作りして、野菜の味や献立にまで気づきを及ぼしたように、パンにおける天然酵母も食卓に変革をもたらす救世主の一つと捉えているのだ。

その最初の一歩。
今回のワークでは、
1)天然酵母って何だろう 2)天然酵母に触れてみよう 3)素材の美味しさを味わうメニュー
という流れで、座学と実習で「美味しいパンが導く食卓」へベクトルを向けてみたいと考えている。

先ずは資料編


【桑の実の採取と酵母起こし】

http://farm8.staticflickr.com/7286/9147535447_11643920ed_n.jpg 2013年6月14日猿橋地内にて桑の実を採る

http://farm8.staticflickr.com/7393/9147529917_54b8e75e89_n.jpg 同日はちみつを加えて酵母液作りを開始

http://farm8.staticflickr.com/7329/9147528845_fb06c31608_n.jpg 蓋を軽く閉めた保存瓶で、毎日一回は振って空気を抜きながら21日(7日後)。汁を濾したものが酵母液。軽く発泡しているのが解る。


【小麦粉と酵母液の混合生地の発酵の様子】

http://farm4.staticflickr.com/3699/9147534323_8fbabfbe93_n.jpghttp://farm3.staticflickr.com/2830/9149758152_521febd1d8_n.jpg 小麦粉、モルトエキス(麦芽糖)、水を入れて練る。室温に置いて15時間後の様子(右が桑から増やした酵母入り)

http://farm3.staticflickr.com/2814/9147531893_b2d04902bd_n.jpghttp://farm6.staticflickr.com/5337/9149763162_822b29254e_n.jpg

http://farm8.staticflickr.com/7282/9149766980_7ca054668c_n.jpghttp://farm8.staticflickr.com/7437/9147530887_8784514da7_n.jpg

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2種類の酵母液を比較しながら毎日一回粉を足しながら培養していく。

最終的に桑酵母は過発酵となり、酸味を持つように。この違いが生き物であり、一律のレシピで誰もが同じようにパンが焼けない理由である。

詳しくは講座でご説明いたします。

2013年6月18日火曜日

クヌギの殻斗(かくと)が導いた新たな画材

この苗と私の描くシナリオを想象してドキドキできる人はこの指とまれ(笑)

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今年の4月においしい里山学校でお世話になった矢代地区の安原さん、小島さんと山菜の事前仕込中に発見したクヌギの種が芽生えた。

クヌギは私にとってフラグ付きの植物。殻斗(かくと)を探していたのだ。

殻斗とはどんぐりの傘。とくにこのクヌギの殻斗はアフロヘアのかつらのようで形がユニークなのだが、用途としては「織部釉の酸化皮膜取り(緑色を鮮明にする)」と「貫入の染色」のため、やきものの材料としてクヌギの殻斗の汁が欲しかった。もちろん一般的にはは代用品で済ます。(余談になるが、わざわざ非効率な事を何故やるか?・・それが自然でかつ未経験のことであれば決して無駄にはならない。数年経ってからでも必ず。時間がかかればかかるほど面白い。)

クヌギの木は見つかってもどんぐりがなるとは限らない。4月10日は、そんなこんなで3年ほど探してようやく大量ゲットできた記念日だった。

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地面に落ちて冬越しをしたどんぐりは春には割れて根が出始めている。生命力あふれる姿に惹かれて数個持ち帰り植えてみたという訳。

今、仲間と小濁をモデルに行なっている復興とエコのプロジェクト「復興鈴・ふっこりん」では、薪の窯で地元の土を焼くプログラムから環境を考えるワークを展開する。もちろん薪も身近なところで調達するのだが、山、森、灰・・自然と暮らしの見事な連携を映してくれるのがやきものなのだ。

「私も加わえてよ!」クヌギの苗がそう私に訴えている。

2013年6月16日日曜日

手作りの美味しさは食べた後にじんわり表れる(「奇跡のダンゴ」のワークで)

昔の農家はくず米も無駄にせず粉に挽いておやつにした。
6月頃、春から伸びた笹は程よく成長し香りもとても良い。田休みにそんな笹を採ってきて、近くに生えているヨモギ、道路端や斜面に生えているスゲを利用して見た目もかわいい笹団子を作り、自分たちの食べるものに手間をかける事を楽しんだのだと思う。

農に勤しむ暮らしでは、当たり前にある身近な材料を使って里山の自然を映し出す笹団子こそ、この時期最も楽しみな暮らしのイベントだったのではないか。
このごく当たり前の事が現代では特別なことであり、贅沢と呼ばれる。それが今後、幻や奇跡と呼ばれるようになってしまうなど、断じてあって欲しくない。

本日のワークショップが終了し、さぁ片付け。といったところの一枚。


笹団子やチマキを食べ終わった跡を眺めながら、「今のコンビニ弁当では同じような気持ちにはなれないな・・」としみじみ思うのである。

大量に出るプラスチックゴミは、この後どれだけの労力とエネルギーと時間をかけて自然に戻していくのだろう?
お金を出してゴミを買い、またそれを処分するために費用をかける。
「安くて便利」のために、大量に作って大量に消費させられる仕組み。
自ずと素材は全国各地からエネルギーを消費して集められ、それがいかにも価値があることのように見せかけられるが果たしてそうだろうか?
効率を重視して製造され、廃棄されるものにホンモノの美味しさは無い。私はそう思う。

4月のヨモギ採りに始まって、農家から分けてもらった小豆、地元のうるち米、もち米、近くの笹。そして今では珍しくなったオヤマボクチを突き込んだ笹団子。美味しさは食べた後にじんわり表れる。「今晩か明日の朝、きっと体調がいい筈ですよ」そう絞めて本日のワークを終了した。
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『奇跡のダンゴ』2013.6.14〜15 妙高山麓都市農村交流施設に於いて
話題の奇跡のリンゴをもじって、地産池消や健康的な手作りの食品の価値を知るワークを開催
●ヨモギの処理や、笹の使い方、保存の仕方、選び方など。”笹団子の元”に入っている添加物について。フードマイレージや地産池消について。

●上越産大納言小豆を煮る(1日目)

●鍋の奥に見えるのは私が育てたオヤマボクチ(通称ヤマゴボウ)。これを潰してヨモギと合わせ餅に突き込む。(2日目)

●米は妙高産のうるち米ともち米を施設に持ち込み、製粉する(1日目)

●チマキは一人3個、笹団子は一人10個。餅の加工は各自が行う

●出来上がった料理(2日目)
チマキ、三五八漬、イタドリの葉の上にニシンやゼンマイ・フキなどの炊合せ、天然の出汁と手作り味噌の味噌汁、きな粉、笹団子

2013年6月6日木曜日

全てが土に還るから

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例えば田んぼの土で、そこにいるタニシの殻と稲わらを釉薬にして茶碗を焼いて、そこで取れた米を炊いて食べる。

これは贅沢なのではなくて、自然。

自然こそ一番のごちそう。

 

土が大好き!特に身近な土。

土から全てが生まれている。なぜなら、最後は全てが土に還るから。

 

乾かしてみる。漉してみる。擦ってみる。焼いてみる。・・

綺麗だし個性的。本当に個性的!

 

ブクっちゃう土は灰汁を抜いて。

溶けちゃう土は焼成温度を下げて。

それでも溶けるなら釉薬や絵の具に。

 

ダメな土なんて無い。

ダメなのは、ダメ土と決めつけて土に合わせようとしない自分勝手。

土はいろんな事を気づかせてくれるんだ!