2013年7月28日日曜日

「完成しない田舎パンの法則」小濁の薪窯でパンを焼きながら..

天然酵母パンの本当の魅力に気付いたのは、もしかしたら今年かもしれない。

ねおかんぱーにゅ南部に近くにある専門学校のインターン生と「小濁発酵文化研究会」を立ちあげ、昔小濁周辺の山でよく食べていたという山葡萄「ミヤマツ」を求め、その酵母でパンを焼くことに挑戦し始めたのは3年前のこと。

三つの柱である「魚の発酵」「天然酵母パン」「麹作りからの味噌作り」。

・インターンの山口君は魚の発酵の研究で自らを飛躍させた。
・天然酵母パンは、清水さんを中心に食の仲間づくりに貢献した。
・麹作りは、甘酒や当時流行っていた塩麹と相まって、手作り味噌作りブームへと花開いた。

天然酵母パンは、先ず窯という規定条件、そして薪、そして小濁地域ならではの産品としてのミヤマツの掛け算である。
私は希望を持っていた。ミヤマツは地域の思い出であり、幻であり、誰も着目した事が無い上にその存在を熟知している人が希少なのである。私は小濁でミヤマツを収穫するべく知人に挿し木による繁殖を依頼、窯を作り薪のマッチングを導くことになった。
右往左往しながら「小濁の窯で、ミヤマツ酵母のパンを焼く」ことに行き着いたが地域の文化となるには程遠い。

今年2年ぶりに冷蔵庫に眠っていたミヤマツ酵母液を起こす事になった。
「村シェフと行こう!おいしい里山学校」そして、水と薪学園の薪講座の特別講座での「薪クッキング」で天然酵母パンを焼くためである。
おいしい里山学校では、山の果物から酵母の元種(ルヴァン・ナチュレル)を作る方法を具体的に示すため、今年採取した桑をモデルに選んだ。それと同時にミヤマツ酵母も並行して行った。(以前のブログで紹介

驚くべきはここからだ。
今年起こした桑は確かに元気で爆発的な発酵力があったのだが、暴走して直ちに過発酵となり、最終的にその力は持続することなく終えることになった。
一方、2年間冷蔵庫で眠っていたミヤマツ酵母液はというと、桑のそれとは比較にならないくらい頼りない発酵力。
諦めかけていたある時、桑を追い越す発酵を見せ始めたのである。少々の事ではへこたれない「底力的なパワー」。それは何回繋いでも安定して多少の放置にも耐え発酵力が衰えず、美味しさ以外の何かを生み出しているようにも感じれた。

そして7月28日のアルネ小濁でのワークショップ「薪クッキング」で、三度それに気づかされることになる。
2種類のパンでサンドイッチを作るメニューで、1種類はミヤマツ酵母の田舎パン(パン ド カンパーニュ:ライと小麦の全粒粉が入った天然酵母パン)。もう1種類はイーストと塩のみのいわゆるバゲット生地。ここでもミヤマツ酵母は存在感を主張した。
グングン膨らんでいくイーストに比べてミヤマツ酵母は地味な膨らみ。
ところが窯に入れると伸びが逆転する(単にイースト側が過発酵という事ではない)。そして合わせる素材に対する包容力の違いも際立つ。
それはこの地由来の酵母だからか、天然酵母に共通する特徴なのかは定かでない。

ミヤマツ酵母は比喩的に教えてくれた。
「一発ブレイク的な元気は長続きせず、組織にとってその有害物質は”長い冴えない時間”によって淘汰される。そして進化の過程にこそ魅力が在るのである」

さらに・・

・継続は力なり…続ける事が目的なのではなく、継続できる力こそ本来の力なのである。
・安定した力は、勝ち負けや奪い合いではなく、”共存とバランスによって生まれる社会”なのである。
・「自然から学べ」。

私の田舎パンは完成することが無い事が分かった。

 

7/16 小濁にて「村シェフと行こう!おいしい里山学校 天然酵母パン講座2」

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ドライトマト入りパン・オー・ルヴァン(ミヤマツ酵母種、粉、塩、水)

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窯の上で発酵中

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それぞれの参加者が持ち寄った天然酵母生地を焼く

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天然酵母パンを囲むランチ

7/28 小濁にて「水と薪学園 薪講座特別講座 薪クッキング」

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焼きあがったフランスとカンパーニュ

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サンドイッチ
左「フランス・シュリンプ・アボカド・チェダー・タルタルソース」
右「ハックルベリー入りカンパーニュ・ローストビーフ・トマト・ピクルス・ハラペーニョ」

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ランチ風景

2013年7月10日水曜日

解らせたら終わり。解った時には終わり。母校でお米料理の開発授業に関わる

当地に「華麗舞(かれいまい)」という、ジャポニカ米とインディカ米の性質を掛けあわせた米がある。始めは、某食品メーカーが開発に携わり、キャンペーンを行ったのでご記憶の方もあるかと思う。
その食品メーカーはカレールーを主力商品に持ち、華麗舞は新しいカレーの食べ方を提案しようとしたものだ。

妙高市は日本有数の豪雪地帯で美味しい米の産地でもある。
米農家が多く、その味にはシビアな自己基準を持っているのだが、果たしてこの華麗舞がどこまで多様化した現代の消費者、そして生産者に受け入れられていくのだろうか興味のあるところである。

というのも仕事として幾度と無くメニュー作りに取り組んだこの華麗舞。
素材そのものを活かすこと、そして地域に密着した産品として育てる事の意義と壁に挟まれ、その度現実を見ているのである。

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本日、私の母校でもある新井小学校の5年生の授業に招いていただいた。秋に行われる市内の小学校の合同イベントに向けた食品開発に関する、講話と試食会のゲストとしてである。

何度かお邪魔しているこの小学校は、昨年建て替えられ広々として明るい。
旧校舎とは異なるオープンな環境が、想像力を育んでくれそうな雰囲気を醸す。
その、ホールと呼ばれる広間でプロジェクタを使い話をした。
その後、調理実習室に移動。父兄のボランティアも加わり試食品の仕上げ、教室前の共同スペースで試食となった。 

話は逆になったが、市内の小学校の合同イベントの名称は「米こめサミット」。
米こめサミットは各学校の5年生が開発した米料理を持ち寄って情報交換をするものらしい。そして、新井小学校はスィーツをテーマに選んだのだという。同小学校は校区の米屋さんの全面サポートを受けながら、妙高市のオリジナリティ溢れる米「華麗舞」を栽培から取り組んで成果を出そうというものだ。

私の講話のテーマは「妙高の素材を活かしたデザートを作ろう」

先ず、宇宙から見た丸い地球の写真からスタートだ。
次にヨーロッパ、アジアの代表的な”米スィーツ”を紹介。
続くは日本である。日本の米のスィーツは? 妙高の米のスィーツは?
と子どもたちに聞くと、「もち」「ケーキ」「パンナコッタ」 ・・

いささかズレているような気もしたが、日本、そして“地域産の材料から派生した甘味(甘いおやつ)“という認識は子どもには理解されにくいようだ。
街場の子ども達にとって、スーパーやコンビニが食料のスタート地点であるとすれば、同列に並んだおやつの産地や文化など理解されなくても当たり前の事なのだろうか。

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実は予見事項としてあった「華麗舞」「ミルク炊き」「砂糖」という粥状のものを、どう美味しくアレンジしようか?というお題に対して、私は身の回りの山野にある「大豆、栗、クルミ、柿やイチジク」、そういった素材の提案を喚起するべく、プレゼンを仕込んできたつもりだった。
試食では、何の抵抗もなくスーパーの陳列棚にある、 ジャム類、コンデンスミルク、きなこ、こしあん、ミックスナッツ、ココナッツミルク、コーンフレーク、チョコレート、缶詰の各種フルーツがトッピングとして並んでいたのだが、このいくつかを除いてはまさに周りを見渡せば存在するものである。

私は、喉のそこまで出かかった言葉を飲み込んだ。「・・・・・・。」

それは自ら気づく瞬間の感動や価値を知っているからで、
私はその環境を整えてやる大人の役割を有していると。

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余談になるが、待機する間に通された校長室には歴代の校長の写真が。高野校長、石原校長。私が在校中には”手の届かないほど偉い人”という印象があったお二方の写真を見つけた時には感慨深いものがあった。

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