2013年10月9日水曜日

残るものと残すもの(オリジナル料理を盛る器作り)

以前に「古代人の暮らしを体験するために、出土した土器を真似て粘土で作り、野焼きで焼き、自ら育てた古代米を当時を再現してふかして食べよう」。というワークショップに関わった事がある。
一言で「拘る」と言うけれども、これはどんな価値があるのだろうと感じていた。
昔を再現したいと思っても、たかが思いつきや通りすがりのワークショップでは触り程度のものにしかならない。そもそも今は昔とは違う。
後に残るものは、その時に興味を持ったことをやれるだけやったという達成感と思い出だけかもしれない、と。

ワークショップの対象が子どもだった場合に、それを導く大人(コーチ)が外してはならないものは何か?としばしば考える。
あくまでワークの完成度なのか、子どもの発想の邪魔をしない許容力なのか。
思いもしなかった花を咲かせ、素晴らしい実を実らせること。それが最高のゴールだとしたら寂しさを感じてしまう。むしろ、いつ芽が出るかも解らない不思議の種のバトンを手渡し続けている。そう思ったほうがよほど夢がある。
「何を残すのか」・・感動の思い出か、いつか芽が出る種か、関わる大人は常に真剣だと思う。

私は、料理とは単なる食べ物とは別の意味を持っているものだと思っている。
一つは器だ。
ただ空腹を満たし栄養を補給して、ついでに旨ければばいい程度のものは料理と言いがたい。料理とは文化、言い換えればバランスのとれた「美」ではないか。
色、香り、盛り付け、旬、物語、いろいろな美感を持ち得た食べ物であっても器に品(らしさ)が無ければ台なしになる。
何れも知識、技術、経験、勘(センス)、個性が伴うものだろう。ゆえにパーフェクトなど有り得ないものなのかもしれない。

そして、とうとう自分で作った器に自分の料理を盛りつけたらどうなるか?と考えた子ども達に、私は何ができるのか。
本当に未熟さを感じてしまう。


「自分達で育てた米(華麗舞)でスィーツを作ろう」というテーマ。まずは子どもたちが管理している田んぼを視察する。

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田んぼの素材を採取

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土や質感、また成形のテクニックより、絵による表現を提案。使い慣れない絵筆ではなく掻き落としを選ぶ

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華麗舞は米粒が長い。リアルな痕跡を残すため、器の裏に子どもたちの田んぼの草や実際に育てた米の後を付けた

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線に加えて塗りつぶしを生かすため80名分の道具を手作りする

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本番は石膏型で作った6寸皿の見込みに白化粧、掻き落とし

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乾燥中の作品

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子どもたちが考えた料理が食べ終わると、自分のアイディアが表れる。その味は果たして・・。

2013年9月13日金曜日

工夫できる環境がボ~ノ!身近なトマトが教えてくれたこと

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桃太郎という品種のトマトがある。
当市の大洞原(だいどうはら)という地域は過去に開拓地で、火山性の岩を掘り起こし、牛を飼って農地とし今やトマトの生産地としてこのあたりでは有名となった所。ここの農家の多くは夏秋(かしゅう)トマトと言い8月〜10月にかけて収穫するトマトを生産している。

日本人はトマトケチャップやカレー、トマトジュースなど喜んで食べる割にこれに使われる加工用(加工に向く)トマトを買ってきてソースを作る事は殆どない。よって、市場にも並ばずもっぱら大手メーカーの流通の範疇。私達の意識が薄くてももっともだ。

サンマルツァーノと言うイタリアでは原産地呼称の認定制度まであるブランドトマトは、加熱加工に向いていると言われている。ソースすると酸味のバランスが良く、水分が少なく種も気にならないために使いやすいのである。では、桃太郎は?

日本で市場に並ぶトマトはサラダとして生で食べる野菜という扱い。普段のスーパーで手に入るからと言ってこれをソースにするとどうなるか?
まず、しっかり熟しているとは言えないので味は薄かったり、味の濃いトマトを選んで求めるとかなり高額になる。そして種が固く多い、水っぽいので煮詰めるのに手間がかかる。期待に届かないのがおちではないか。

ここ数年、各地の農家とお付き合いが深まり生産地としての苦労が少しづつ解るようになってきた。例えば生食として販売できないトマトの存在。私なら直ぐに加工してしまえば、と思うがなかなかそう簡単にはいかない事も。現在加工品として直売所に並ぶものもあるが、飛ぶように売れるものでもなさそうである。
そこで、私なりに工夫してみた。

売れないものの殆どは、傷がついているか雨などの影響で割れたもの。決して味が悪いというものではない。むしろ色づくまで収穫しないこの地のトマトの旨さを持っている、という食材としての可能性を秘めるもの。
先ず蒸して芯まで加熱し、そこで出てきた透明に近いジュースは取っておいて別に煮詰める。皮を剥いてミキサーにかけた後は種を通さない程度の網で濾し、これも煮詰め濃縮のジュースと合わせる。
さて、ここまですると素晴らしい濃い味と甘みを持ったトマトピューレになる。
サンマルツァーノに比べると糖分はかなり多い。そのため、完熟桃太郎特有の味を持つオリジナルのソースということになる。

http://farm3.staticflickr.com/2857/9735448154_8a6876a1e4.jpg サルサ・ポモドーロ

原材料コストはそれほどでもないが、ここまでの手間と、加工の時期が限られてしまう事から大量処理〜流通には向かないと思うがこれを逃してしまうのはあまりに勿体ないと、私は今年もたくさんのトマトを瓶詰め加工して一年の材料を確保した。

さて、実はここまで来るのに3年ほどかかった。冷凍保存という合理的とは言えない処理に変わる、瓶詰め保存に目を向けてからだ。メリットは沢山あってそれは別の機会にお話するが、今年作ったこの手間のかかるピューレの美味しさは特筆すべきものがあった。
酸味がキツイ場合は砂糖を入れてとか、その逆の時はとか、ガーリックは、ハーブは、オイルは・・などと手立てを尽くして旨くする必要が全く無く、ともかく元が美味しい。
そこそこの素材でも美味しくしてしまうことがプロのテクニックだと思うが、このトマトピューレは調理人は一歩さがるしかない。そう思わせられたこれに、私は今までなぜ、トマトソースはサンマルツァーノなどと決めつけていたのか。と愕然とさせられた。それになぜ一生懸命味をつけなければいけなかったのか、も。

http://farm6.staticflickr.com/5491/9735434546_1ab1a968d9_n.jpg この夏の加工品ラインナップ:左上から..ありもの野菜のピクルス、ラタトュイユ、濃縮トマトジュース、ホールトマト、サルサ・ポモドーロ、トマトピューレ

弁明的に言うと、一般のレストランではコストや時間が掛けられず、入手経路や人のネットワーク、開発環境そういったものが整えきれなかった。これから私が工夫すべきはこの美味しさや価値をいかにして多くの人に伝えていけるかということだろう。
与えられたものしか選べないのでは寂しすぎる。
課題を見つけ工夫ができる環境こそが素晴らしいことなのだ。・・再びそう思った。

http://farm3.staticflickr.com/2866/9735433348_5f1a140988_n.jpg この夏のストック

2013年9月3日火曜日

地域発信はそこに住む人の役目(夏野菜のイタリア料理講座)

季節の野菜が美味しくないはずがない。春の山菜、夏のスイカやトマト、秋の新米、冬の根菜類。

大地は季節季節に身体に必要な食べ物を与えてくれる。

(h25)8月28日の講座のテーマは「夏野菜のイタリア料理」だ。
講座の冒頭、受講者を前に「皆さんはきっと今日、夏野菜のパスタとトマトのピザを作ると思われたでしょ?」・・私の一言に笑いがこぼれる。

イタリア料理のイメージといったら赤いトマトソースに、オリーブオイル、アルデンテのパスタにとろ〜りチーズのピッツァかもしれない、でもそれでは食としての限界がある。
一歩進んで、イタリア的な調味料や材料の扱い方、コースの流れ、イタリアらしい食べ方、即ち食文化を知っていただこうと思った。
今回は農村の地域リーダーのための研修である。
なにせイタリアは「スローフード」の発祥の地。スローフード運動を起こしたイタリア人の食の考え方は日本の地方でも活かされるに違いない。

アンティパスト(Antipasto 前菜)〜プリモ・ピアット(Primopiatto 最初の皿)〜セコンド・ピアット(Secondpiatto メインディッシュ)〜ドルチェ(Dolce デザート)

このコースのそれぞれにどんな特徴のある材料が使われ、どんな料理があるかを知るだけでもイタリアの食文化に迫ることができる。
そして、本場のイタリアの食材に触れてそれを認めるだけではなく、自分の生活に密着した食材や文化と融合させていくこと。そして新しい文化を発信していくことが地域の一人一人の役目なのだと思う。
料理に限らず、その土地の特性を活かすことは、その地域に住み、そこで生活を営む者にしか出来ないことだ。
なぜ?
今あなたの家に置いてあるお気に入りの家具。朝日の当たる数分だけ、水槽のプリズムがその家具と素敵なコーディネートを見せてくれたとしても、それをあなたが紹介しなかったら誰がしてくれるだろう。

 

「上越地域野菜のイタリア料理コース」
(パン)コーン入りフォカッチャ/おひさまコーンは生食もできる甘みの強い品種。フォカッチャに使うとレーズンのようなアクセントが面白い

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(アンティパスト)サラダ茄子とプロシュート/パルミジャーノ・レジャーノ、イタリアの生ハムにフルーティな水茄子のオリーブオイル漬けを組み合わせた。

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(プリモピアット)米粉のニョッキ 海老とトマトのソースで/市内で生産されている微粉米粉とじゃがいものニョッキ。有頭の海老で味を出しプチトマトや白ワインと共にアクアパッツァの要領で濃厚なソースに仕上げる。

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(セコンドピアット)イノシシの煮込み越の丸ナス、四角豆、カラーピーマン添え

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(ドルチェ)カボチャのジェラート、ココナッツのガレット添え

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2013年8月22日木曜日

「なぜ◯◯の理由」…なぜ美味しいの?なぜサンドイッチなの?

あの人と食べたあの時の料理が忘れられない。
そんな大切な思いでがあなたにはあるでしょう。
その中でも、美味しさが忘れられないものを思い出してみてください。それはなぜ美味しかったのでしょうか?

私はもう計算できないくらい、大勢の方と料理を一緒に作り、一緒に食べてきました。同じ料理人であっても、料理屋さんではあり得ない光景ですね。
実は私にとって、美味しさが忘れられない料理のいくつかは講座で作った料理です。プロが作った訳でも、店で食べる商品でも無い物がなぜ美味しいのか?
理由を一つお教えしますが、それは緊張感です。
皆さんは、普段緊張して料理を作る事がどれだけありますか?

私の講座では、(途中は"ふふふん"のノリでも)最期は美味しい物を食べてやろう!そんな空気がみなぎっています。そして材料と作り方が見えているので嘘はつけません。やり直しが利かないうえに、相手はプロの料理人ではありません、子どもの事もあります。
それでも美味しい物を体験していただくという意気込み。
参加者は普段と違う手順に戸惑い、見られたことが無い包丁さばに注目される。
そこに生まれる集中力、ということです。

指導する方も、作る方もこんなムードの中で、出来た料理が美味しくないはずがありません。
もちろん中には集中できないかたもいらっしゃいますが、それはそれだけの自己満足です。

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ところで本日の講座は「手が出るサンドイッチ」ということで、材料のこと、作り方含めて全て正直にお話しました。
「今回作るサンドイッチは手間がかかります。その理由を考えないで面倒くさいと思われるかたは、大量安価に出回っているものを買って食べるほうがずっと楽で、きっと食べ慣れた味付けで美味しく感じるでしょう。
・・としたら、大量加工品に含まれているモノも含めて肯定してください。」と。

「作るのは面倒で料理に時間を使いたくない」
「便利に買ったものに含まれる不安なものは許さない」
両方は求められない理由を作って知ってもらうこと。
今日のサンドイッチが美味しかったら、不安な添加物も、濃い味付けの調味料も不要。ということを舌で納得していただくこと。
これらによって家庭でも食事の作り手の心得について今一度考えてみて欲しいのです。

「工夫」は手抜きや言い訳のためにあるのでははく、難しいものを面倒に感じないようにするためにあるものです。
なぜの理由が解れば自然と身についていくものと思います。

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2013年8月17日土曜日

暑〜い日!という場面で遊びは主役となり得る

連日の猛暑のため、熱中症による死者の累計数がニュースにのぼる今日この頃。

昔のような暑さ対策は通用しません、そのため・・「エアコンを使いましょう」「塩分を補給して」などとアナウンスされる。
温暖化でこのような異常気象が起こっているとすれば、
各戸のエアコンの使用による電力消費の影響はどうなのか?
とか、あれほど減塩をうたっていた健康指導はどうなってしまったのか?とか、矛盾を感じている。

アウトドアで自然に親もうと言っても、昔のような抵抗力を持ち得ない今の若者が川の水を飲んだり、土を食べたり、虫がうじゃうじゃしているような環境にさらされて平気でいれるはずが無かろう。
災害による住環境の変化が、急遽訪れたりすることだってあるかもしれない。
資源が危機的になれば、自ら鍬を持ち、薪を集め、山菜や魚や動物を捕らえて食べることだって覚えていかなくてはならないと思うのだが、そんな人間の生命力を感じにくい世の中だ。

お盆を過ぎてもこの暑さ。私は冷房の部屋に閉じこもってデスクワークをしよう、など自分の都合の仕事はなるべく避け、労働効率の悪い時間帯はあきらめて早朝や夕方以降に集中してやることにして省エネルギーを実践しようと試みる。
日中の外出では必ず車に乗ることになり、エアコンを引っ切り無しにつけることになる。
それでもちょっとエンジンを止めると車内は高温になり、すぐさまエアコンをつける。そして涼しい店に入る。冷たい飲み物を買う。
こんな不経済で不健康な事を繰り返して環境がおかしくならない筈がない。
昔の人は自然に逆行するような事はあえてしなかったもんだが、そこいくと現代の無理やりさったら無い。

こんな暑い日の賄いは単純にかぎる。
しかも、なるべく負担なく栄養を取り込む事。
食欲の感覚も薄れてきているので、脳を刺激するように多少の遊びの組み合わせも、食べる人にとって嬉しいのではないか。即ちありものの5分クッキングのワンプレートだ。

 

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風通しのよい玄関の土間で、訪れた友といただくランチ=「脳に刺激のうどん」冷たいつゆをはったうどんに、モロヘイヤ、トマト、冷奴、なますかぼちゃ、たらこを巻いた卵焼き、チクワの蒲焼きをドンと乗せて。

金継(きんつぎ)の「3R」…最もおいしいのは3番目のR

野焼作品「みみポッポ」
展示中に誰かがかまって大事な3つのツノの内一つがとれて紛失・・がっかりし続けることおよそ5年。

ふと思いたった「金つぎ」これは良好!

http://farm6.staticflickr.com/5334/9525449709_9bb2475f17.jpg「みみポッポ」

破損部分を復元して漆と金で仕上げる。と言っても擬似漆ですが、直せば再び使えて(Reuse)、ゴミが減り(Reduce)、なおかつ新しい価値が生まれる(Revalue)という3倍美味しい仕事。

普通に出来上がったものには無い、切羽詰まった環境を乗り越えてきたモノのみ表現し得る 破天荒な姿 を美しく味わえるというもの。

 

 

という訳で、割れていた作品をかたっぱしから修復中。

http://farm6.staticflickr.com/5500/9528239246_e0a511117f_n.jpg 野焼作品(2010?)

http://farm6.staticflickr.com/5342/9528238456_083ff2f334_n.jpg 「トトチュー」..は雌だった(低温焼き締め 2013小濁窯)

http://farm6.staticflickr.com/5547/9525453149_844bdabc2d_n.jpg 2013未来窯作品(小濁窯)

http://farm8.staticflickr.com/7341/9525451741_4b205f8154_n.jpg 2013小濁窯(クルミ還元 高杯)

http://farm3.staticflickr.com/2813/9528234994_2fcf0bcc4c_n.jpg 濃赤の漆も(子どもの体験作品)http://farm4.staticflickr.com/3756/9525451105_b341440aa9_n.jpg (子どもの体験作品)

(子どもの体験作品)

2013年8月11日日曜日

自然と此処に・・タンドリーが運んだ一期一会(本格インド料理の回で)

料理が下手と感じている人はいませんか?
もしかして、センスが無いんじゃないのか?とか。
いえ、料理の基本は舌(味覚)ですから、誰もが平均的な感覚は持っているし、そう思っているあなただけが劣っているなんてことはありません。
ただ、感性は内から現れるものですから、絵や音楽を聞いて感動したり、美しいなぁと思ったりを養うと同じように、口に運ぶ物は良いものを選ぶべきです。

何が良いものか?答えの一つは「自然である」ということです。
ここにある食べ物がどうやって、何から出来ているか解らないものは自然かどうかを自分の責任で確かめる事ができません。家族に食べてもらうのをためらうのが普通です。
信頼のおける人が作ったものを食べるのもいいかもしれませんが、そんなことよりも自分で作ることです。
自分で作ると、今食べたものが何がどれだけ入ったかが解ります。そして徐々に求めて食べるものが自然かどうかが解るようになります。

自分で作るものは料理ばかりではありません。
道具だって、食する環境だって自分が作るんです。
それによって何が美味しいかが解るようになり、なぜ自然が大切か、偉大かが解るようになります。
そしてそのための努力をしなくても自然とある所に導かれて行くものだと思います。

人工的なものが駄目だとか、機械生産が悪いとか言っている訳ではありません。
自分のモノサシで選べるように、食べ物を考えて口に運ぼうということです。

本日のワークショップは偶然居合わせた日本の各地のかたと、友人、お世話になったかた、いくつかの家族が一緒になって、猛暑の妙高で思い出深いランチを刻みました。
私はずっと前からこの日に自作のタンドリーを持ち込もうと決めていました。

どれくらい前かな?・・・(笑)

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写真 3写真 2http://farm3.staticflickr.com/2835/9483052163_a755d267cd_n.jpghttp://farm8.staticflickr.com/7367/9483026107_f3a14615bd_n.jpghttp://farm3.staticflickr.com/2812/9485848884_1054de8b08_n.jpghttp://farm8.staticflickr.com/7455/9485823590_871f928e08.jpg

メニュー(手前から反時計回り):タンドリー料理/ナン、チキン、村シェフのシークケバブ・プローンマサラ(エビとひよこ豆のカレー)・パラクマサラ(ほうれん草のカレー)・野菜サラダ・冷たいチャイ

2013年7月28日日曜日

「完成しない田舎パンの法則」小濁の薪窯でパンを焼きながら..

天然酵母パンの本当の魅力に気付いたのは、もしかしたら今年かもしれない。

ねおかんぱーにゅ南部に近くにある専門学校のインターン生と「小濁発酵文化研究会」を立ちあげ、昔小濁周辺の山でよく食べていたという山葡萄「ミヤマツ」を求め、その酵母でパンを焼くことに挑戦し始めたのは3年前のこと。

三つの柱である「魚の発酵」「天然酵母パン」「麹作りからの味噌作り」。

・インターンの山口君は魚の発酵の研究で自らを飛躍させた。
・天然酵母パンは、清水さんを中心に食の仲間づくりに貢献した。
・麹作りは、甘酒や当時流行っていた塩麹と相まって、手作り味噌作りブームへと花開いた。

天然酵母パンは、先ず窯という規定条件、そして薪、そして小濁地域ならではの産品としてのミヤマツの掛け算である。
私は希望を持っていた。ミヤマツは地域の思い出であり、幻であり、誰も着目した事が無い上にその存在を熟知している人が希少なのである。私は小濁でミヤマツを収穫するべく知人に挿し木による繁殖を依頼、窯を作り薪のマッチングを導くことになった。
右往左往しながら「小濁の窯で、ミヤマツ酵母のパンを焼く」ことに行き着いたが地域の文化となるには程遠い。

今年2年ぶりに冷蔵庫に眠っていたミヤマツ酵母液を起こす事になった。
「村シェフと行こう!おいしい里山学校」そして、水と薪学園の薪講座の特別講座での「薪クッキング」で天然酵母パンを焼くためである。
おいしい里山学校では、山の果物から酵母の元種(ルヴァン・ナチュレル)を作る方法を具体的に示すため、今年採取した桑をモデルに選んだ。それと同時にミヤマツ酵母も並行して行った。(以前のブログで紹介

驚くべきはここからだ。
今年起こした桑は確かに元気で爆発的な発酵力があったのだが、暴走して直ちに過発酵となり、最終的にその力は持続することなく終えることになった。
一方、2年間冷蔵庫で眠っていたミヤマツ酵母液はというと、桑のそれとは比較にならないくらい頼りない発酵力。
諦めかけていたある時、桑を追い越す発酵を見せ始めたのである。少々の事ではへこたれない「底力的なパワー」。それは何回繋いでも安定して多少の放置にも耐え発酵力が衰えず、美味しさ以外の何かを生み出しているようにも感じれた。

そして7月28日のアルネ小濁でのワークショップ「薪クッキング」で、三度それに気づかされることになる。
2種類のパンでサンドイッチを作るメニューで、1種類はミヤマツ酵母の田舎パン(パン ド カンパーニュ:ライと小麦の全粒粉が入った天然酵母パン)。もう1種類はイーストと塩のみのいわゆるバゲット生地。ここでもミヤマツ酵母は存在感を主張した。
グングン膨らんでいくイーストに比べてミヤマツ酵母は地味な膨らみ。
ところが窯に入れると伸びが逆転する(単にイースト側が過発酵という事ではない)。そして合わせる素材に対する包容力の違いも際立つ。
それはこの地由来の酵母だからか、天然酵母に共通する特徴なのかは定かでない。

ミヤマツ酵母は比喩的に教えてくれた。
「一発ブレイク的な元気は長続きせず、組織にとってその有害物質は”長い冴えない時間”によって淘汰される。そして進化の過程にこそ魅力が在るのである」

さらに・・

・継続は力なり…続ける事が目的なのではなく、継続できる力こそ本来の力なのである。
・安定した力は、勝ち負けや奪い合いではなく、”共存とバランスによって生まれる社会”なのである。
・「自然から学べ」。

私の田舎パンは完成することが無い事が分かった。

 

7/16 小濁にて「村シェフと行こう!おいしい里山学校 天然酵母パン講座2」

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ドライトマト入りパン・オー・ルヴァン(ミヤマツ酵母種、粉、塩、水)

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窯の上で発酵中

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それぞれの参加者が持ち寄った天然酵母生地を焼く

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天然酵母パンを囲むランチ

7/28 小濁にて「水と薪学園 薪講座特別講座 薪クッキング」

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焼きあがったフランスとカンパーニュ

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サンドイッチ
左「フランス・シュリンプ・アボカド・チェダー・タルタルソース」
右「ハックルベリー入りカンパーニュ・ローストビーフ・トマト・ピクルス・ハラペーニョ」

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ランチ風景